VIPRPGフリーゲーム「ドグマの箱庭」「引き裂かれたバダール」「シューニャの空箱」考察感想

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VIPRPG「ドグマシリーズ」とは

VIPRPGの「ドグマシリーズ」とは、2chの有名ツクラー(※RPGツクールのフリーゲーム制作者)「藻太郎」氏が制作する一連のVIPRPGシリーズ作品です。

作風は一言で言えば、陰鬱で退廃的でエログロナンセンスでカオス。作品テーマには「オタク文化」「ブラック企業」「外見の醜さ」「モテない」といった性質が含まれています。

ドグマシリーズの主な作品には

  • ドグマの箱庭
  • 引き裂かれたバダール
  • アリスの標本箱
  • シューニャの空箱

の4作があります。このほか「ポイズンセレクション」という作品もあるものの、2020年現在、ダウンロード先を見つけることができませんでした。

また前日談的な作品や小ネタには

  • アリシアのパンセ
  • ゾーエーの共鳴箱

もあります。

今回はドグマの箱庭から始まるドグマシリーズを紹介していきます!

タイトル 時系列 一言感想
ドグマの箱庭 第1作 / 人間を敵視する「ドグマ」が世界を支配する 批判・中傷・エログロに満ちた作品だが不思議な希望や明るさを感じさせる。ブラックユーモアと敵キャラの魅力に引っ張られます
引き裂かれたバダール 第2作 / ドグマシリーズの中では独立した作品 塔を登って階層を旅する王道RPG設定に、多量のエログロ要素が詰め込まれている。ドグマの箱庭のキャラクターも再登場。イシュタムが可愛い。
アリスの標本箱 第4作 / 第3作「ポイズン・セレクション」の主人公・ポイズンが王に生活保護を打ち切られて旅に出る ドグマの箱庭の数百年後の物語。ワールドマップが広く探索の自由度が高い。前2作と比較すると死生観が強く前に出ており、シューニャの空箱と前2作の橋渡し的な意味合いがある。
シューニャの空箱 シリーズ最終作 / 仏教の教えをベースに人類発祥〜滅亡までを描き切る圧倒的なスケールに発展 イシュタムが主人公として登場。釈迦が生きていた時代から人類滅亡まで様々な時代を渡り歩く。シリーズ全作をプレイしていると感慨深い

ドグマの箱庭

ストーリー

大筋としては「主人公が父に代わって、敵を討伐する」という王道RPG。

ストーリーの大筋以上に各地で発生するイベントのVIPRPGならではの小ネタや、敵キャラクターの造型や狂気がかった振る舞いが印象に残ります。

第1作目にしてエログロナンセンスや「外見の醜さ」「モテない」といったテーマは完成系に近く、特に印象的な場面は「外見の醜さを気にして外に出てこない王」と「王に取り入る女」の話。

端的に言えば「胸糞悪い」話が続きますが、全体的に妙な明るさが漂っているのは作者の作家性を感じさせます。

グラフィック

グラフィックははっきり言って不気味です。特に敵キャラクターのニヤッとした笑みなどは、鳥肌が立つほど気味が悪いもの(良い意味で)。作者の自作グラフィックに気合いを感じます。

RPGツクールのデフォルト戦闘のため、本作はRPGとしてはあくまで王道ですが、それでもかなり奇抜な印象を与えるのはグラフィックの力も大きいです。

戦闘・バトルシステム

RPGツクールのデフォルト戦闘をそのまま踏襲しているため、戦闘・バトルシステムには特に変わったところはありません。それほど難易度が高いわけでもなく、特殊な戦闘が盛り込まれているわけでもありません。

VIPRPGでもし面白い戦闘などを求めているならば、ドグマシリーズではなく「ふしぎの城のヘレン」がおすすめ。VIPRPGに限らず、フリーゲーム全般ならば「ワールドピース&ピース」がおすすめです。

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感想

ドグマシリーズの記念すべき一作目。ブラックユーモアやVIPネタ、エログロが炸裂していながら細かな点の意外な細かい作り込みが楽しいです。

たとえば会話パターン。会話パターンには時間帯の概念が盛り込まれていて、同じキャラクターでも朝・昼・晩で話す内容が全然違います。また時系列の概念もあり、ある事件を解決する前なのか、後なのかでまた会話が変わります。

 

ドグマシリーズを全作プレイするのが難しい方は「引き裂かれたバダール」「アリスの標本箱」「シューニャの空箱」とプレイし、遡る形で「ドグマの箱庭」に戻るのもおすすめです。

>> ドグマの箱庭(20-313にあります)

引き裂かれたバダール

ストーリー

ドグマシリーズの第2作ですが、前作のエログロナンセンスやVIPネタ要素を引き継ぎつつ、「ドグマ」を巡る話からは独立。

主人公は記憶を無くした謎の存在「スズメ」。スズメは仲間とともに塔を登り、謎の人魂「バダール」を追いかけます。塔を登り、各階で起きるイベントを解決したら、また次の階へ・・・というSaGa的な展開が続きます。

とにかく話は陰惨ですが、アイテムを取ると仲間が会話に割り込んでくるなど、個性豊かなパーティーメンバーとのコミカルで楽しい会話が「冒険感覚」を高めています。

グラフィック

グラフィックは「ドグマの箱庭」に続き、全て作者によるエログロな自作グラフィック。全てにモンスター図鑑による解説が付いているので、クリア後も図鑑コンプリートを目指してプレイする楽しみがあります。

戦闘・バトルシステム

「ドグマの箱庭」から引き続き、デフォルトの戦闘です。

感想

本作のキャラクター・イシュタムは「シューニャの空箱」で主人公として登場します。

「ドグマの箱庭」「引き裂かれたバダール」はシナリオに直接的な繋がりはなく、順不同で遊べる作品のため、最初にプレイするなら「引き裂かれたバダール」がおすすめです。

「引き裂かれたバダール」をプレイして「アリスの標本箱」に進み、「アリスの標本箱」が気に入れば「シューニャの空箱」に進み、「アリスの標本箱」よりも「引き裂かれたバダール」が好みで荒れば「ドグマの箱庭」に戻るのがおすすめ。

>>引き裂かれたバダール

アリスの標本箱

「ドグマの箱庭」から数百年後の物語。「ポイズン・セレクション」のポイズンが主人公として登場します。ちなみにポイズンは顔面障害者と呼ばれるレベルのグロメンで生活保護を受給している設定です。

前2作とストーリー的な繋がりを持ちつつ、最終作「シューニャの空箱」に繋がる死生観を打ち出しており、物語を大きく発展させた意欲作です。逆に前2作の熱狂的なファンからは、作風の変化に戸惑いの声も聞かれる作品でもあります。

ストーリー

極度のグロメンで生活保護を受給しているポイズンは、王から生活保護の打ち切りをチラつかされ、やむなく3人の仲間とともに旅に出ます。

戦闘の難易度は低く、比較的ストーリーはサクサク先に進みます。ワールドマップは広く、主人公が移動魔法を覚えたあとはポテチやオーブの回収も楽。一度訪れた街を再訪すると、NPCが結婚していたり、死亡していたりと街中に変化が起きています。

王道RPGという意味で、テイストは「ドグマの箱庭」寄り。

ただし若干の不穏さが増しています。

ドグマシリーズのストーリーを時系列に沿って厳密に並べると、「ポイズン・セレクション」前半部の続きが「アリスの標本箱」。「アリスの標本箱」に続くのが「ポイズン・セレクション」後半部で人類が滅亡。人類の発祥から滅亡までを旅するのが「シューニャの空箱」。つまり「アリスの標本箱」は滅亡前夜の世界です。

グラフィック

グラフィックは前作までの2作を踏襲しています。図鑑コンプが楽しいです。

戦闘・バトルシステム

戦闘の難易度は、主観も混じりますが低めです。レベルさえ上げればサクサククリアできる難易度です。

感想

前2作のキャラがゲスト出演しつつ、ドグマシリーズの持つ死生観を前に出した作品です。戦闘の難易度が低く感じるため、単体でのやりこみ要素は低く感じられるかもしれません。

本作を評価するには、前2作と「シューニャの空箱」を含めたシリーズ全体の一部として評価するのが妥当で、シリーズにおいてはとても重要な位置付けの一本です。

>>アリスの標本箱

シューニャの空箱

ドグマシリーズの完結編に該当する作品で、人類の発祥から滅亡まで様々な時代を旅し、釈迦と出会ったりもします。

ストーリー

主人公は過去作にも登場したイシュタム。イシュタム達は気づくとなぜか異次元の世界に居て、元の世界に戻ろうとする中で時代を超えた旅に出ます。最初に釈迦が生きていた時代を訪ね、そこから様々な時代を巡るイシュタム。

釈迦の教えがどのように各時代へと引き継がれているのか、あるいは引き継がれずに人々が愚かな道を歩んでいるのかをありありと見せつけられます。クリア後要素はなく、どんどん物語が終わりに向かっていく悲しさが全体を覆っていますが、悲しみを乗り越えようとする意思も感じます。

グラフィック

グラフィックはこれまでのシリーズと同様ですが、マップの作り込みや死体の山の狂気の描写など、シリーズ最終作の気合いを感じます。エログロで君が悪いからこその美しさが極まってきている印象です。

戦闘・バトルシステム

戦闘はツクールのデフォですが、難易度がグッと上がっています。MPに余裕がないバトルが多いので、回復にはかなり気を配る必要があります。

感想

シナリオは「クロノ・トリガー」をイメージすると分かりやすく、各時代を旅して死生観に触れると、初期のエログロに満ち満ちたドグマシリーズからは想像できない世界の深みを感じます。一方でキャラクターとのネタだらけの会話や敵のグロさも相変わらず。

ある意味クソゲーである意味神ゲー。ドグマシリーズの完結編にふさわしい傑作です。

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